◆熟議と強行採決◆
東京オリパラ組織委の森喜朗会長(当時)の発言は、「女性蔑視」とともに「熟議の軽視」が批判の対象でした。「わきまえた」会議を良しとしたからです。
わが府中町議会でも2月19日の全員協議会で熟議を欠いた強行採決がありました。政治倫理条例の遵守規定を「パワハラや不当要求」にも適用拡大する申し合わせの決定です。質疑・討論を求める声があるにもかかわらず、それを省略する採決の動議が出され、多数決で決まってしまったのです。
昨年10月の初議会で新人が提案した「正副議長選挙前に本会議を休憩し、所信表明会を開くよう求める議案」が紛糾の中、否決されたのに続く2度目の強行採決です。
今回議題となった政治倫理条例は府中だけでなく全国多数の議会にあります。金銭や利権の疑惑、地位利用による人事介入など、議員の不当な「政治的行為」を戒めるルールです。その条例の遵守規定に議員の「パワハラや不当要求行為」を盛り込もうというのであれば、本来なら条例改正案を本会議で審議(提案、質疑、討論)し採決するべきです。ところが今回はこうした手続きを避けた決定が行われたのです。
もちろんパワハラや不当要求はよくないことでしょう。しかしそれは政治モラルを定めた倫理条例とは別の社会規範の問題です。今回は吟味不十分で立法技術が未熟なため、提案の文章や論理構成も杜撰なものでした。
今回の決定は改革派議員へのブレーキを狙った面が透けて見えました。議長選の所信表明会開催を始め、議事録の録音開示、分かりにくい文書の是正など慣行打破と情報開示を求めてきた田中の動きが「議会事務局に厳しいパワハラ」であり「執拗な要求」だと指摘する向きがあったからです。
今回は、質疑が始まろうとした時、副議長が採決を求める動議を出し、9人が賛同。質疑を求める6人の反対を押し切って議長が採決に付しました。閉会後「賛成であれ反対であれ、同僚議員の発言機会を奪っていいのか」と批判した田中に対し、副議長は「質疑したかったなら対抗して動議を出せばよかったではないか」と応じました。
強行採決といえども合法であり、多数決は民主主義の基本です。しかし少数意見を考慮することもまた民主主義の基本です。田中は同22日、議長に抗議文を出し、「問答無用でなく、皆で正々堂々と意見を述べ合う公正で民主的な議会をつくりあげていこうではありませんか。議会は熟議の場です」と申し入れました。議長は「意見として伺いました」などと答えました。
以上、昨秋に続く残念な報告ですが、議会改革をめざし、さらに頑張ります。 3月定例会は5日開会し、予算審議などの後、15、16日に一般質問があります。田中は在宅介護の問題と地域猫活動について質す予定です。(2021年3月6日)